児島徳夫コラム:有機無農薬農法にまつわるアレコレを語る

児島徳夫コラム1

おいしいとはどういうことか?

児島: わたしは「おいしい」という概念をずっと追求してきたんです。
 おいしいっていうのはどういうことか? それは、まず、喉ごしがいいってことです、わたしから言わせれば。

 水のおいしさと同じですね。気持ちよくすーっと喉に入ってくる、そして、何度入っても飽きが来ない。これは、ミネラルバランスがいいと、そうなるんですね。

 コメの中のミネラルバランスをよくするには、田んぼに、適量のミネラル・・・石灰、マグネシウム、リン酸、イオウ、マンガン、ホウ素、鉄、銅、亜鉛、ナトリウムなどが含まれていなければなりません。

 ミネラルバランスのひとつの理想型は、海の水ですね。生命の源である海のミネラルバランスが凝縮されているのが、海草類だとわたしは思うんです。だから、堆肥(たいひ)の中にわたしは古代海草粘土(多孔性古代海洋腐植質)ミネグリーンをくわえて、ミネラルバランスを調整できるようにしています。

 <八幡礦業株式会社 ミネグリーン>
http://www5.ocn.ne.jp/~yahatako/index.html

 おいしさのもうひとつの要素は、コメ一粒一粒に含まれるエネルギーの量の多さです。エネルギーというのは、炭水化物、デンプンや糖分のことですね。これが多く含まれているほど、おいしくなる。

 じゃあ、それはどういうことなのか。わたしはね、やっぱり、みんなアバウトだと思うんです、こういうことに関して。でも、もっとある程度まできちんと説明がつかないといけないと思うんですね。

 たとえば、日本で有名なコメの産地には北の雪国が多いですね、これはなぜだと思いますか? 

 おいしい米を作るには、昼と夜で寒暖の差が必要なんです。昼は植物は光合成を行いますよね。CO2(二酸化炭素)を吸ってO2(酸素)をはき出す… その結果、植物の内部にはC(炭素)が蓄えられる。太陽エネルギーが形を変えて炭素として植物の中に取り込まれるわけです。その炭素(C)と水(H2O)が化学結合して炭水化物(CmH2nOn)になる。

 じゃあ、夜はどうなるかというと、もし夜が昼と変わらず暑いままだと、植物はそれだけ生きるために多くのエネルギーを消費しないといけない。つまり、昼に蓄えたエネルギーを夜には使ってしまうことになるわけです。人間も暑い夜は寝苦しくて疲れが増すでしょ。だから、昼は暖かく日が照っていても、夜は涼しくなるほうが、おいしいコメができるんです。

 コシヒカリがなんでおいしいか? コシヒカリは収穫の時期が一番遅いでしょ。その分だけ、コメの中にたまるエネルギー(炭水化物)の量が多くなるわけです。だから、おいしいし、保存しておいても味が劣化しにくいわけ。保存してる間に、呼吸でコメのなかのエネルギーがすこしずつ失われても、元がいっぱいあるから、まだたくさん残ってる。だから、貯蔵しても、おいしく食べられる。これに較べて、早生(わせ)系の、早く収穫できる品種がありますね、あれは、最初はおいしいんですよ、でも、収穫してから時間がたつと、コメが呼吸してエネルギーが消費されちゃって、うまみが残らなくなることがあるんですね。

 つまり、いかにして、多くのエネルギーをコメ粒のなかに蓄えられるか、一粒のコメに炭水化物がぎっしりと重く詰まっている状態、それがおいしいコメを作る上で、一番の目標になってくるわけです。

 さらにですね、わたしの目指したいのは、ビタミンCやEをはじめとする抗酸化物質、これもやっぱり炭素と水素と酸素が複雑に結合してできるものなわけですが、コメの中にそういうビタミン類をたっぷり蓄えたビタミン剤みたいなコメを作りたい。おいしいだけでなくて、「くすりのようなコメ」ですね。もちろん、いわゆる医薬品とは違うものですけど、そういうものができればと思っているんです。

 いかにして炭素をいっぱいイネのなかに取り込められるか、結局、そこに話は集約されていく。そのために毎年毎年いろいろなやり方を試して、結果を検証して、何年もやってきました。あと2,3年かな、あとすこしでその技術や方法が確立できそうなところまで来ています。

一粒のコメに炭水化物がぎっしりと重く詰まっている状態の稲穂(写真はすべて児島徳夫の作物)

それを脱穀精米したもの